「極楽鳥」展にて
インターメディアテクで開催中の
「極楽鳥」展に行ってきました。
東京大学総合研究博物館とレコールが協催する本展示。
見応えたっぷりの素晴らしい内容でした。
展示は、19世紀半ばから20世紀半ばに作られたジュエリーの歴史的名品と
そのモチーフとなった鳥を対比する、という構成。
夜の森に佇むフクロウに始まり、
オナガドリやケツァール、極楽鳥の元となったオオフウチョウ、
ハチドリの群生ジオラマなどの剥製に囲まれるようにして、
繊細で華美なジュエリーたちのショーケースが並びます。
どれも比べようがないほど美しく、それぞれ素晴らしい細工なのですが、
作品によって、製作者による鳥の「表現のしたさ」に差が見えるのが面白いところ。
(軽やかさ、動き、羽の造形、色彩、リアリティ、煌びやかな存在感、神秘性…)
制作された時代の芸術運動も影響しているそうです。
中でも面白かったのは、ピエール・ステルレという作家による
実在しない幻想の鳥がモチーフの作品群。
極度に抽象化されたフォルムは、パラレルな異世界の鳥のよう。
「人が自然を何らかの形で留めようとする営みはなぜ起こるのか」
という疑問が、鑑賞を進めるうちに湧いてきます。
剥製も、絵も、ジュエリーも、すべて自然をベースにした二次創作。
違う素材やメディアに置き換えて、自然を再現し続けている。
思い起こせば、古代の洞窟壁画の頃からずっと変わらずそうなのです。
なぜ彼らは獲物をとって食す生活の合間に、暗く低酸素な洞窟の奥に、
わざわざイノシシやウマやバイソンを描いたのか。
人間の根源的な欲求、表現行為のあり方まで考えさせられます。
鑑賞の際は、インターメディアテクの公式アプリ、"onIMT"のコンテンツ
”耳で聴く「極楽鳥」展”のイヤホン聴取を強くお勧めします。
順路の足取りに沿って、東京大学総合研究博物館の研究員たちによる
鳥に関する学術的な解説が聴ける、というもの。
ジュエリー、剥製、絵画に現される鳥たちへの理解が深まり、
展示体験の質を一層豊かにしてくれます。
しかもこのアプリ、鑑賞者の移動に合わせて
展示スペースごとのコンテンツに自動で切り替えてくれます。親切!
この手の抑制の効いた、過度な演出のない語りも個人的に好きです。
「人間がどれほど抽象化し、想像を凝らしたところで
それを超えてくるようなものが自然にはある」。
解説中この言葉は特に印象的でした。
今回初めて訪れたインターメディアテク。
常設の夥しい標本や剥製等のスケール感にも圧倒され、心底気に入ってしまいました…
自然を探究する、人間のピュアな「知」を求めるエネルギーの清々しさ。
作為なく存在する自然の途方も無い美しさ。
企画展のない時でも、たまに行って癒されたい場所になりました。
会期終了まであと5日。
GW直前の平日もすでに混み合ってましたが、
ぜひとも実物をご覧になってみてください。
「極楽鳥」展
-2023.05.07 @INTERMEDIATHEQUE 3F